「マティスを追いかけて(ジェームス・モーガン)」

【書名】マティスを追いかけて

【副題】

【著者】ジェームス・モーガン

    山岡万里子(訳)

【出版社】アスペクト

【出版年】2006年

ヘミングウェイにあこがれて作家になった著者は、彼が自死した年齢(62)に近くなるにしたがい、自分が目指す人生は、そのような人生ではないこと。アンリ・マティス、彼こそが、自分の人生に必要な力であることに気付いていく。そして、妻ベスと2人で、マティスの足跡を追いかけヨーロッパに長期の旅行に出かける。

「真の画家にとって最もむずかしいのは、一本の薔薇を描くことだ。なぜなら、まず初めに、これまでに描かれた薔薇の絵をいっさい忘れなければならないからだ。(アンリ・マティス)」

ピカソとマティス、おなじみの大巨匠だが、この2人は同時代に革新的な仕事をしたという点では同じでも、全く違う人生を生きた2人でもある。饒舌で感情的で人間味に溢れたピカソに対し、忍耐強く静かで、しかし、限りなくポジティブでタフなマティス。これは、勝手な私のイメージだが、それほど外れていないと思う。(80歳を過ぎたマティスが、ほとんど視力を失い車椅子に座って制作した切り絵は、限れなくポジティブなエネルギーに溢れている。)

コルシカ島、コリウール、カマルグ、カシ、モロッコ、ニース、そして、ヴァンス、ロザリオ礼拝堂。明るい日差しの中で、著者もまた、人生を書き換えて行くように旅は進んでいく。

「「大いなる愛が必要だ。」とマティスは亡くなる前の年のエッセーに書いている。「いかなる芸術を生み出すにも欠かせない真実を得るための、この不断の努力、そして同時にこの寛容、そして深くみずからをさらけ出すという行為を、生き生きとなしつづけていくためには。だが考えてみれば、そもそも愛こそが、すべての創造の源泉ではなかったか?」