「創造力なき日本(村上隆)」

【書名】創造力なき日本

【副題】アートの現場で蘇る「覚悟」と「継続」

【著者】村上 隆

【出版社】角川書店

【出版年】2012年

この本の中で多くを占めている組織論に関する部分には全く興味を持てなかった。しかし、村山隆という芸術家の存在にはとても興味がある。

「わかりやすい単純な部分でいえば、欧米では「見た目がきれい」的なことは重要視されません。知的なゲームを楽しむのに似た感覚で芸術作品を見ているので、目に入った瞬間の美しさなどよりも、観念や概念といった「文脈」の部分が問われるからです。」

「芸術家は”覚悟と肉体を資本としたアスリート”です。」

「一.構図 二.圧力 三.コンテクスト 四.個性」

実に正論。というか、目標として見習い、学ぶべき指針であると思う。この本の中で、著者は自分に対して「嫌われ者」という言葉を何度も使用し、その都度、理由を分析してみせる。村上隆の作品の永遠性・普遍性に疑問があるという巷の声を意識してか、「努力型」「戦略型」である自分の最大の目標は「死後型」の芸術家になることだと言う。やはり、根っからの努力・戦略の人なのだろう。

芸術家の書いた本のなかで、著者はかならず「感動」やそれに類する言葉を使用するものだが、村上隆は一度も使用しない。彼の凄いところは、芸術に「感動」の代わりに「戦略」を持ち込み、公言したところである。「芸術家」というより「絵師」としての職人性が強かった江戸時代などでは無く平成のこの時代に、村上隆は芸術から「感動」や「爆発」や「情緒」や「湿り気」を取り去り、芸術こそ「戦略」であると言い放った。隠れファンとして、是非、その姿勢を生涯貫く姿を見てみたいと思う。