「石版画(阿部浩)」

【書名】石版画

【副題】LITHOGRAPH

【著者】阿部浩

【出版社】引隆社

【出版年】1996年

著者はパリ国立高等美術学校でリトグラフを学んだ版画家。石版によるリトグラフをメインに、具体的な技術や造形思考について作家の立場から記述している。

「本来、造形美術は単に手技のみからなるものではなく、又、観念のみからなるものでもない。いわば造形的エスプリとも言うべきヴィジョンをもった精神である。リトグラフの制作にあたって積極的に自己の創造の内的システムを確立する努力を続けるならば、常に新たな発見が、それぞれの洞察力を強いものにするだろう。周到な意識は良い作品をつくる用意であり、深い観察と認識からなる厳しい眼は創造の力である。」

【雁皮刷りの手順】1.雁皮紙を版面にあわせた大きさに切る。2.版面にインク盛り。3.雁皮紙を、版面にふせ霧を吹く。4.裏打ち糊を水でのばしたものを、刷毛で対角線方向にX状に塗り、上下、左右に均等に糊をのばす。5.余分な糊を取るため水で湿したスポンジで軽くたたく。6.台紙に刷る紙(しなやかな手漉き和紙やBFKなど)は、やや全体を湿らせておく。雁皮紙となじみ易くなるため。7.台紙を雁皮紙の上にふせ、当紙をのせてプレスすると印刷と台紙貼りが同時にできる。8.印刷した後は、合紙を入れてカルトンなどにはさみ、上から軽く重しをする。コツは、インクの硬さ、糊の解き具合にある。

【描画材:ペン】リトグラフ発明の初期はペンによるリトが主であった。インク:シャルボネ社 Encre Zincographique(金属版用)ペン:イギリス Gillott社 No.290 、No.659、Brandauer Litho、フランス Sergrent-Major