「版画の技法(利根山光人ほか)」

【書名】版画の技法

【副題】

【著者】吉田穂高、駒井哲郎、利根山光人、福井良之助

【出版社】美術出版社

【出版年】1964年

担当は、凸版:吉田穂高、凹版:駒井哲郎、平版:利根山光人、孔版:福井良之助となっている。豪華なメンバーの執筆陣。

利根山光人のリトグラフ転写法の記述にはとても刺激を受けた。

「絵が反対なのをいやがる人は、コロンペーパー(転写紙)を使用すればよい。コロンペーパーとは簡単にいえば紙の上に糊を塗ったもので、この糊で光った方の紙面に絵を描く。自分なりに糊をつくってコロンペーパーをつくるとよい。この場合、コロンペーパーの下にカンバスとか板目をおいて描くと独特の質感がでて面白いものができる。コロンペーパーは現在日本では、ほとんど市販品しかないが、これは用途がお免状の文字や図案用にできているため、薄くて絵を描くのに適しない。パリの材料店で買ってきて使ってみたが、糊が厚く、いったんクレヨンや解墨で描いた上からさらに小刀や削り針で削り取ることができ、非常に重宝なものだった。日本でも日本の湿度にあった糊を厚くした特製のコロンペーパーを早くつくってもらいたいと思う。クレヨンとコロンペーパーさえあれば画家はどこでもリトグラフを描けるわけである。」

「工房に行って直接石に絵を描かなくても、コロンペーパーに絵を描いて渡せばよいので、デッサンがそのままリトになるといった感じである。しかも、そこにはデッサンそのものとは違った、プレスして出てくる版としての魅力をもった作品が生まれるわけである。」

利根山光人の期待を裏切り、現代作家によるリトグラフ転写法の作品を目にすることはまず無いのが現状。理由はアルミ版を使用した転写が難しいこと。アルミ版に合うコロンペーパーのレシピの研究がされていないこと。そもそも、興味を持つ人があまりいないのかもしれない。しかし、このまま幻の技法にしてしまうのは非常に惜しいと思う。