「子ども美術館29 日本の色をさがす(上野泰郎)」

【書名】子ども美術館29 日本の色をさがす

【副題】日本画をかく

【著者】上野泰郎

【出版社】ポプラ社

【出版年】1986年

日本画家・上野泰郎先生の美しい日本画作品と文章で構成した、絵を描く楽しさにあふれた子ども向けの美術解説書。上野泰郎先生は創画会のごく初期からの会員。私にとっては多摩美術大学で教わった恩師であり、また、大学卒業後も何かと気にかけていただき大変お世話になった。最後にご挨拶をしたのは、2001年に銀座和光の個展に伺った時だったか。その時頂いた画集と毎年の年賀状は今でも大切な宝物である。

「日本画はこまかくかくという一つの特徴があります。絵の具のあつかいかたなどがやっかいなこともあって、必要以上に技法にたくみさをきそうきらいがあります。わたしは、この絵の具をじぶんでつかってみると、いろいろなつかいかたができるはばのある絵の具だと、おもうのです。実際にはあまり実験がなされないで、ただむかしからつたわる技法をつかっているきらいがあります。日本のむかしからつたわる芸術は、えてして型をおもんじるあまり技巧にとらわれて、ほんらいの新しくものを創りだすよろこびをわすれがちです。技法の踏襲はあくまでもたんなる技術にすぎません。芸術の伝統というのは、あらたなる精神にもとづいた、その時代の真のさけびのつらなりでなくてはいけないとおもうのです。わたしはいままでの伝統の技法にあきたらなくなって、もっと解放して自由にやってみようとかんがえました。筆でただこまかくかくという、あまりにも末梢的な神経にばかり気をとられて、ほんらいの絵をかく精神をおきわすれているいまの日本画に抵抗して、絵の具皿からといたその手で画面にぬりこめるかきかたをえらんだのです。」

著者には、他に「さいしょのくりすます(至光社)」という素晴らしい絵本もある。詩人・まどみちおが「文句なしの傑作絵本」と絶賛。日本画の絵具を使い、指と手のひらで描かれた絵本です。